般若心経をお唱えする宗派とお唱えしない宗派 (第3話)

 1「般若心経」初心者のためのやさしくて詳しい解説 その3

般若心経タイトルイメージ図

 

1-2般若心経をお唱えする宗派
(
1940年の宗教団体法が公布される以前からある13の宗派)

般若心経を重視している宗派は、

密教系の真言宗/密教系と法華系の天台宗
禅系の曹洞宗・臨済宗・黄檗宗
奈良仏教系の華厳宗・法相宗・律宗、

※浄土系と法華系は「般若心経」をお唱えしません

 

   凡例(1940年の宗教団体法が公布される前から存在している13の宗派)
お唱えする宗派  密教系ー真言宗、天台宗  禅系ー曹洞宗、臨済宗、黄檗宗
         奈良仏教系ー華厳宗、法相宗、律宗、 広く読まれるお経

    ※ただし 浄土系ー浄土宗では、食事等の際に唱える。
     修験道では、修験者(山伏などの行者)が「行」を行う際に唱える

                 融通念佛宗の勤行の中では、食事作法のときに般若心経を唱えます。
                 また、年に三回ある大数珠繰りのときにも、全員でお唱えします。

    時宗でも称えることはあるようです。

お唱えしない宗派  浄土系ー浄土真宗
          法華系ー日蓮宗は、般若心経を唱えることはありません

 

Sponsered Link

 

お唱えする宗派について、調べてみました


密教系の真言宗

般若心経は、真言宗にとって大切なお経ですから在家信者の勤行の中心となります。

勤行を全て行う余裕の無い場合は、開経偈、般若心経、光明真言、大師宝号、回向を行います。

真言宗本尊 (凡例:高野山真言宗総本山金剛峯寺)

[寺院]大日如来、阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩、不動明王等
[在家]大日如来(金剛界)
・宗 祖 弘法大師 空海

①合掌礼拝
②懺悔文
③三帰
④三竟
⑤十善戒
⑥発菩提心 ほつぼだいしん
⑦三摩耶戒 さんまやかい
⑧開経偈
⑨般若心経
⑩本尊真言
⑪十三仏真言
⑫光明真言
⑬御宝号
⑭祈願文
⑮回向


密教系と法華系の天台宗

教えの根本経典は「法華経」

しかし、日本天台宗を開宗した最澄 は、「法華経」の教えには三種あるとして、そのうちの一つ、根本法華経を後世、般若心経と指定しました。

勤行の中心となるお経は、朝は、「観音経」や「般若心経」夕方は「自我偈」や「円頓章」になります。

勤行を全部行う余裕の無い場合は、般若心経のみ、または「観音経偈文」と般若心経を唱える。

天台宗本尊 (凡例:天台宗総本山比叡山延暦寺)

[寺院]薬師如来、阿弥陀如来、釈迦如来、観音菩薩、不動明王
[在家]座釈迦、座弥陀
・高 祖  天台大師 
・宗 祖  伝教大師 最澄

①懺悔文
②開経偈 かいきょうげ
③般若心経
④回向文


禅系の臨済宗

在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「大悲咒」「開甘露門」「観音経」などがあります。

勤行をすべて行う余裕の無い場合は、般若心経を唱えるだけでも十分です。

臨済宗本尊 (凡例:臨済宗妙心寺派大本山妙心寺)  

特定の本尊をたてない。
・開 祖   栄西

①開経偈
②般若心経
③本尊回向
④坐禅和讃
⑤舎利礼文
⑥宗門安心章


禅系の曹洞宗(そうとうしゅう)

「只管打坐」(しかんたざ)を教えの特徴としています。

曹洞宗にとって般若心経はきわめて重要な位置を占めています。

在家信者の勤行の中心となるお経は、般若心経をはじめ、「観音経」「修証義」などです。

曹洞宗本尊    (凡例:曹洞宗大本山總持寺)
  [寺院]釈迦如来
  [在家]釈迦如来
 ・高 祖   承陽大師 道元(永平寺開山) 
 ・太 祖   常済大師 瑩山(総持寺開山)

①開経偈
②懺悔文
③三帰礼文 さんきらいもん
④三尊礼文
⑤般若心経
⑥修証義 しゅうしょうぎ
⑦四弘誓願 しぐせいがん
⑧回向


禅系の黄檗宗(おうばくしゅう)

明治9年 臨済宗黄檗派から黄檗宗になった為、在家信者の勤行の中心となるお経は、臨済宗と同じです。

般若心経は唐音で読むのが特徴「ポゼポロミトシンキン。

カンツサイプサ、ヘンシンポゼポゼポロミトス」となる。

修行形態は臨済宗と同様。

儀式の形式や使われる言葉は明時代の様式。教典は特に定めていません。

陀羅尼や阿弥陀経も読みます。

念仏を唱えるが浄土系とはかなり捕らえ方が異なる。

黄檗宗本尊  

[寺院]釈迦如来
[在家]釈迦如来
・開 祖   隠元 真空大師 

①開経偈
②般若心経
③本尊回向
④坐禅和讃
⑤舎利礼文
⑥宗門安心章


奈良仏教系の華厳宗(けごんしゅう)
大方仏とは、時間や空間を超えた宇宙の真理である。

盧舎那仏(奈良の大仏も盧舎那仏のひとつ)のこと。

太陽のように光明を放つ仏で、この光明によって迷っている人々を浄土である華厳世界に導く。

「一がそのまま多であり、多がそのまま一である」という相反するものを一つに統括しようとする考え方を持つ。

哲学的な雰囲気が濃厚で宇宙的でもあります。

空海が東大寺の別当になったことがある為、作法や行事に真言宗的なところがあります。

華厳宗本尊 (華厳宗大本山東大寺)

[寺院]盧舎那仏(るしゃなぶつ)

・日本における華厳宗は、第3祖法蔵門下の審祥(しんしょう)によって736年に伝えられた。

大方広仏華厳経。

八つの会座からなりそれが三四品により構成されるが、なかでも、下記が有名。

① 十地品(じゅうじぼん)菩薩の修行の十段階を示したもの。

② 性起品(しょうきぼん)全てが仏性に光照らされ存在していると説く。

③ 入法界品(にゅうほうかいぼん)善財童子が仏道をもとめて旅をする物語。
 いずれも「信」こそが重要であり絶対の「信」を得るために修行すると説く。


奈良仏教系の法相宗(ほっそうしゅう)

『解深密経』(げじんみっきょう)唐の玄奘(げんじょう)訳が用いられます。

唯識(ゆいしき)の深義を述べたもの。

玄奘の弟子の慈恩大師基(じおんだいしき)が開いた宗派です

道昭が日本に伝えた。

長い時間をかけ段階を経て修行を重ねて成仏すると考える。

また、ひたすら念仏や題目を唱えるとか坐禅をするなど、ひとつの行に専念するのではなく、さまざまな行を勧めるようです。

法相宗本尊 (世界遺産 法相宗大本山薬師寺)

[寺院]  薬師如来

 弥勒菩薩みろくぼさつを本尊とする事も出来る

・始 祖  玄奘三蔵 玄奘の弟子、慈恩大師基(じおんだいしき)

・開 基(創立者)は天武天皇、道昭、義淵

『解深密教』『唯識三十頌』『成唯識論』等 般若心経を中心とします


奈良仏教系の律宗(りっしゅう)

経・律・論の内、律を中心とする。

戒・定・慧の三学でも定慧は戒に含まれると考える。

戒律と言えば一般的には戒より律の方が念頭に置かれるが、律宗では戒に集約される(戒は自己規制=自発的。

律は集団のルール=他律的)。

空海の影響で灌頂(かんじょう)もある

律宗本尊(唐招提寺は、南都六宗の一つである律宗の総本山)

[寺院]  盧舎那仏(るしゃなぶつ)

・開 祖  鑑真和尚

「律宗」は奈良仏教系の大乗の教えですが、何故か真言宗と同じく密教の行を修めないと僧侶になれないシステム。

教典は四分律、梵網経、法華経が中心。


修験道では、修験者(山伏などの行者)が「行」を行う際に唱える。

神道でも唱えるところがある。

神社(神前)で読誦の際は、冒頭の「仏説」を読まずに、「摩訶」から読む。

浄土宗では、般若心経を祈願や食事訓のときに唱える。

偈文を何個か読み上げてから開経偈に入り、浄土三部経や、般若心経、用途に応じて唱える。 (引用:Yahoo!知恵袋より浄土宗信徒様の回答)

時宗では、神社参拝及び本山での朝の勤行の後に熊野大社の御霊を祀る神棚に向かい三唱することが必須となっている。日用に用いる場合もある。

融通念佛宗の勤行の中では、食事作法のときに般若心経を唱えます。また、年に三回ある大数珠繰りのときにも、全員でお唱えします。  (引用:お寄せ頂いたコメントより  ご指摘ありがとうございます)

Sponsered Link

 

 お唱えしない宗派の理由  

浄土系浄土真宗は、阿弥陀如来の本願(必ずあなたを救うという誓い)にお任せし、この人生を歩ませていただく教えです。

ですから、

真宗のお勤めは、阿弥陀さまのお徳を讃え、帰るべき故郷であるお浄土を偲ぶために行います。

『般若心経』は立派なお経ですが、阿弥陀さまやお浄土のことが出てきません。

肝心な阿弥陀さまとお浄土が出てこないお経は読まないのです。

浄土真宗では、浄土三部経と正信偈を唱えます。

最後の部分(「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆呵」)が密教的な呪文になっていて、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人がこのような祈りや密教的なものを徹底的に排されたからです。(引用:Yahoo!知恵袋より浄土真宗のご住職様の回答) 

法華系日蓮宗と言うのは、天台大師や伝教大師の「全ての経典を統括して法華経を中心と置く」と言う考えを踏襲しています。

ただ全ての経典の中心は法華経なので修行も法華経とさらに法華経の要点である「南無妙法蓮華経」を中心に置くので他の経典の読誦などは不要と言う考え方だと思います。(引用:Yahoo!知恵袋より日蓮宗のご住職様の回答)

 

「般若心経」初心者のためのやさしくて詳しい解説シリーズ目次 全8話

1 「般若心経」とは?初心者のためのやさしくて詳しい解説(第1話)   

2 般若心経の国民的な人気のお経の伝来とは?(第2話)

3 般若心経をお唱えする宗派とお唱えしない宗派(第3話) 

4 般若心経の漢訳や西遊記を書いた玄奘三蔵法師とはどんな人?(4話)

5 般若心経を漢訳した玄奘三蔵法師の音写と漢訳とは(5話)

6 般若心経の寸劇の舞台設定場所とは?インドのマガダ国(6話)

7 般若心経の構成(第7話)

8 全文訳(第8話)

では、お読みくださり、ありがとうございます。

アンジュールのノマー

 

Sponsered Link

 

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ